🧠アートde対話

一生を通じて完成させる対話の自由研究。

「医療×芸術」の視覚トレーニングの経緯と効果

前回記事に引き続き、イェール大学英国芸術センターのプロジェクト「視覚トレーニング」について続けます。

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Braverman博士が当時の医学教育に対して危惧していたこと

Braverman博士自身が医学部生時代に受けた教育は「すでに知られているパターンを探すこと」でした。

例えば「レントゲン上のこの種の影は、この種の問題を意味している。」といったQ&Aマニュアルのようなもの。しかし、医者が医学部で習わなかった状況に遭遇したらどうなるか? 答えを丸暗記しているだけのようなマニュアル型人間のままでは、参照できるパターン=知識がないのです。応用能力の欠如とも言いますでしょうか。

Braverman博士によると、そういった状況での、医学的なパズルを解くスキルを身につけるには10年ほどかかるそうで、だからこそ彼は学生たちに先手を打とうと考えたのです。

レーニング参加後の医学部生に質問「観察者としての自分について何を学びましたか?」

この質問に対して、ほぼ全員の医学部生が

「視覚トレーニングワークショップに参加する前は、自分は十分な観察者であると思っていたが、参加してみると、自分は物事を表面的にしか見ていないことに気づいた」と回答したそうです。

 

ちなみにこの視覚トレーニングを受けた医学部生(1年生対象)は、受けていない学生たちに一切変化がないのに対して、10%も観察力(細部の検出力)が向上したという結果が確認されています。

Braverman博士が医学部生たちに教えたいこと

身体診断には一見しただけではわからないことがあること

  • 現代*では医師が実際に患者を見る時間は短く、検査や数値に頼りがち。
  • 検査や数値に頼るのではなく、患者と向き合う時間が長ければ長いほど、検査では見落とされてしまうようなことに気づきやすくなる。

*2014年

 

次回は、Braverman博士の発言で私が強く共感し、それと同時に現代社会に生きるすべての人たちに該当する問題提起となる部分を書きたいと思います。